死ぬまでずっと一緒だよとか、そういう約束をした覚えはないのだが、それでも死んでもずっと一緒だった。
あのこは一緒にいることをきっと当たり前だと思っていて、当然だと思っていて、だから自分を置いてフラっといなくなったりとかするのだが、それはあの子はふらっとどこかにいっても必ずここに戻ってくるからで、その戻ってきたときに自分がここからいなくなるだろうなんてことは微塵も思っていないのだ。微塵も。
(あれ、ユウちゃんがいない……)
今日も。気が付いたら双子の片割れがいなくなっていた。
気付くのが遅いとも言われそうだが、特になんでもなく、目を離したらあっという間にいなくなっている。そんなのは別にいつものことだ。
そのことに気づいた双子の弟は、いつもは相方が戻ってくるまで待っているのだが、せっかくなので少し、この周りをふらふらしてみることにした。
普段ふたりでしか見ない景色だ。
いつも二人でいると片割れがはしゃいでそれについていくのが精いっぱいでじっくり見たことはなかったなぁと思う。背中越しだから景色なんて半分くらいしか見えないし、そもそも相方を追いかけないといけないから周りなんて気にしている余裕はないし。
(あ、こんなことろに花とか、咲いてたんだ)
ふわり。見下ろした地面に一輪の花。
手に取ろうにも触れる手は持っていないのだけれど。
そういえばあまり気にしたことはないが、鼻もきかなくなっているから、花の香りとか、そういうものも感じたことがなかったと、今更ながらに思い出した。
(花の匂い…どういうのだったっけ……?)
思い出そうとして少しだけ首をかしげる。
昔、そう昔だ、生前。嗅いだはずの匂いを、しかしどうしても思い出せなかった。感覚としてなくなってしまっているのかもしれない。残念だ。
ふぁさり。風の音がして花が揺れるのを見送った。
風吹いてきた、と思って、そういえば風は感じるなぁと思う。否、感じるような気がするだけで、実際は感じていないのかもしれない。
冷たいとか、あついとか、そういうのも良くわからない。
(あれ、なんか)
そう思ったらなんだか世界がつまらないものに思えてきた。
普段は忙しい姉の相手をしていて気づかなかったのだが、目に見える世界は全部手の届かないもので、感覚として感じられるものは何一つなくて、ふわりと揺れて浮かんでいる自分は。
「……ん、……ぅえーんっ」
と、不意に遠くから誰かの泣き声が聞こえて意識を戻す。
誰かの、というより、あの声は。
聞こえた声の方へ飛んでいき、レイは目的のそれに話しかけた。
「…どうしたの、ユウちゃん」
「あーーっ!!レイくんどこ行ってたの―――!!」
泣いていたのは、双子の片割れだった。
何がどうして泣いているのかわからないが、自分を見つけるなり抱きついてきた双子の姉の背中をとりあえず叩いてやる。
「レイくんがいなくなっちゃったからビックリしたのー!!」
「そう、ごめんね」
めずらしく泣きじゃくる姉をなだめながら、その背中に触れられることに少しだけ安堵を覚えた。
「うん、ごめんね、大丈夫、どこにもいかないよ」
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