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拍押し(コスト)

コード譜を見る。歌詞を追う。指でトントンとリズムを刻んで、他のパート譜を一瞥。
それだけで大体終わる。コスタの譜面チェックは。
そのあとは軽くチューニングして終わり。そのあとはあろうことか全部のパートを完全に暗譜している。

そういう天才だから、恐い。



「ずれてんぞ」



ピタリ。響いた言葉に動きがとまる。一瞬心臓も止まったかと思った。

「…ど、どっち、かな?」

出来るだけ柔らかに、空気が重くならないようにと気を付けてストルナムは言葉を返す。
音程かリズムか、どちらかがずれるとぽつんと冷静にそう指摘される。神経質かつ完璧主義の彼はどうにもそのあたりが許せないらしく、彼が納得するまでは先に進ませてくれない。
これだからコスタとの譜面合わせは嫌なのだ。こういうときにかぎっていない他のメンバーを恨まざるを得ない。

「リズム、拍の中に入りきってない」

やはりそっちか。
ストルナムは心の中で毒づきながらゆるく笑みを浮かべた。
バンドにおいてギターはボーカルに次ぐ華だ。その分難易度も高いパートだ。とかくなんとか技巧とかなんちゃら奏法とかあるぐらいで、今回指摘された部分も当然譜面の中で一番難易度が高い箇所なのだから仕方がないといえば仕方ない。

ただ、仕方ないで流してくれるほど目の前のベーシストは甘くない。

(リーダーならそのくらいノリでなんとかなるって言うと思うけど?!)

と、言葉に出来ない言葉を飲み込んだが、ストルナムの全身からにじみ出る不満を読み取ったか、コスタが一度立ち上がりストルナムとの距離を詰める。

「な、にかな?」
「貸してみろ」

言うなり彼はギターを奪い取り2,3度弦を弾いたかと思うと。





問題の個所を寸分違わず演奏しきってみせた。





「こう。な」



「こう、って……」

無造作に返されたギターを落とさないようにしながら、ストルナムは顔を引きつらせる。
……こういう天才なのだ。コスタというやつは。
嫌味でもなんでもなく、多分キーボードだろうがドラムだろうが同じことだ。パートはベースだが、別にどの楽器でも譜面を初見で完璧に演奏してみせるだけの実力と才能を持っている。いっそトランペットとかホルンとかも吹けるんじゃないだろうか。

何食わぬ顔で自分の担当の楽器を取りながら再度チューニングを始めた彼をぼんやり見送っていたら、いつまでも自分が動かないことに気づいたか、視線だけでこちらを見上げてきた。


「とまぁ、別にお前さんがもてそうだからって安易な理由でギター始めたのは構わんが、やるならしっかりやれよってこった」
「ちょ、もてそうだからって…!」
「そうだろ」

(そうだけど!!)
何も言い返せないでいるストルナムから視線を外し、またベースを弾きながらもう一言。




「モテそうだからでいいんだよ。恰好良くしようっていう演奏が、いい音出すんだろ」




オレは感情を乗せるのが苦手だから。
それだけいって低い音を立てたベースに満足したように小さく笑うコスタに、ストルナムがほめられたのだと気づいたのは一拍遅れてからだった。





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