世界の終わりを、知っていた。
黄昏色に染まる空がどうしても切なくてどうしても悲しくてそれでもどうしようもなくてただ、世界は壊れていった。
視界はいやというほどクリアで霞むことなく、ただもうだめなんだということだけは漠然と理解ができて、麻痺した感情は見上げた空の色だけを記憶していた。
「どうしたの、アルル」
ふと、そんなアミティの声に瞳を開けた。放課後帰り道、太陽のまぶしさに目を細めたその時のことだ、どうやらぼーっとしてしまっていたらしい。先を行くアミティが不思議そうにこちらを見送っていた。
何か、夢のようなものを見たような気がしたが、それは思い出せなかった。
視線をめぐらせれば空は夕暮れの色。
なんだった、というわけではないが、その色に僅かに瞳を、細める。
「……なんか、夕方って寂しいね」
特に何が、というわけではないが、その空の色が僕にはどうしても切なかった。
アミティは僕の言葉を受けて空を見上げる。
「そうだね、1日が終わっちゃうもんね」
彼女も言いながら少し寂しそうに眼を細める。しかし、それから笑って続けた。
「けど、また明日も新しいみんなに会えるから、楽しみだよ」
その時のアミティの顔は覚えていない。
ただ、その言葉に僕は何故か何も答えられなかった。答えられなかったのだ。「そうだね」のその一言が。彼女の言葉は確かにその通りで、自分もそう思うはずなのに何故か。
まるで、この空の色の向こうに明日は続かないんじゃないかって、そう感じてしまったのだ。
何をバカな。ちゃんと明日は当たり前にやって来て、また皆の笑顔に会える。その筈なのに。そう信じているはずなのに。何も疑う必要など、あるわけがないのに。
アミティは答えない僕には気づかず、今日の夕飯の献立に頭を働かせはじめた。彼女の家の今日の夕飯は何だろう。そういえばこの世界にきてからカレーを食べる事が本当に少なくなったなと、僕はまた切なくなった。
カレーだってただ、材料を集めて自分で作ればいいだけのはなしなのに。
「さて、暗くなっちゃう前に帰らなきゃ」
「そうだね」
「また明日ね、アルル」
「うん、また」
また。
その言葉がいやに重かったのは何故だろう。
元気に手を振って走るアミティの背中を見つめながら僕はもう一度空を見上げた。
僕も帰らなくちゃ、日が落ちる前に。
落ちる、前に。
(だけどねぇ、僕の帰る場所は、どこ?)
(還る世界が壊れたことを忘れて異世界で生活する壊れた世界の中心にいた少女の話)
アルルの帰る世界=某の~みそこねこねしてた会社の作った世界 みたいななんかこう真魔導とメタ世界のいろいろをごちゃまぜにした妄想とかなんかそんな感じ。
本当は、かえる世界なんてもうとうにないのにね。
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