去年のバレンタイン用にと書いていたバレンタイン10題、間にあわなくてお倉入りしたのを救済しようかと思ったんですが、このままで行くと今年も間にあわないのが目に見えていたので、出来あがっているのだけさっさと救済してしまおうと思いました。
ちなみにお題配布元さんは既に閉鎖されていますorz
順番はお題にあてはめたCPをお題番号順に書いたので適当です。
いつもより糖度2割増。
ということで追記よりどうぞ。
「溺愛で10のお題」
今日は決戦日である。女の子にとって。
それが企業の策略だなんだのと言われようが何だろうがこの波に乗れなかったら終わりなのだ。それこそが真の負けなのだ。
彼女とて、例外ではない。
ラーラはいつものポニーテールを気合いを入れて結び直し、鏡の前でとびきりの笑顔を作ってから駆け出した。
愛しの彼のもとへ。
「カミュ先輩~!!」
「やぁ、ラーラ。今日も元気だな」
「先輩こそお日柄もよく!!」
「?」
言ってからやってしまったと思った。気合いが空回りしてなんだか変なことを言っている。
これではあのトロくさい同級生のアルルと同じではないか、そんなことがあってなるものか。
ラーラはもう一度顔をあげる。ふと、彼の手の中のあるものに気がついた。
嫌な、予感がひとつ。
「先輩…あの、それ…」
「ああ、今朝がたアルルが来てな、置いていった」
「アル…!?」
一番聞きたくない名前なうえに一番負けたくなかった相手だ。カミュは何かとアルルを気にかけている。ラーラにとってこれほど邪魔な相手もいない。
ラーラとて負けるつもりはない、だが今彼の手の中にあるものは何だ?今日この日に女子から男子に渡すものなんてひとつしかない。
ましてやアルルのそれが通っているということは。
「先輩…アルルの…それ」
恐る恐る言ったら見てしまった。カミュがどこか嬉しそうに笑っているのを。
「ああ、チョコレートだよ」
………先を越された。単純にそう思った。
昔からアルルがカミュを慕っていたことは知っていたし、だからこそラーラもライバルと見てきたのだ。カミュこそ誰にでも優しいが、少し考えればそのくらい容易に。
ラーラは下唇を噛んだ。悔しかったのは己の迂闊さだ。
先を越される前に出し抜けなかった自分の。
「…義理だってさ」
「…………は?」
続いた言葉に思考が止まった。義理?今義理と言ったか?
アルルが、カミュに、義理チョコ?
ラーラは三度顔をあげる。
カミュは相変わらず嬉しそうな笑顔を浮かべていたが、よく見ればその中には確かに、懐かしさと、寂しさが混ざっていた。
「あの下手な男子より逞しかったアルルがさ、改まって何を言うかと思いきや本命あげる練習に付き合ってくださいだって言うんだぜ?」
可愛いよな、そういって笑う。ラーラはいまいちついていけずに固まっていた。
「……あの」
「女の子って、変わるよな、本当」
つまりなんだ。先程の自分の葛藤は全部勘違いだったと。そう気付いた瞬間顔が紅潮した。
「まぁおてんばで言ったら、キミもそうだったかな?」
何も知らないカミュがにっこりと笑いかけてきた瞬間、ラーラはよくわからない恥ずかしさで逃げ出したくなった。
思わず言い返そうとした言葉は、しかしうまく音にならなかった。
「ラーラ?」
返事のないラーラにカミュが声をかける。と、彼女は軽く俯いて真っ赤な顔で涙を堪えていた。
「ちょ、どうしたラーラ…ああ悪い、お転婆は言い過ぎた…」
「違います!!」
ピントのずれた発言にひとこと。そうして顔をあげると真っ正面からカミュを見つめて手に持っていたチョコレートを差し出した。
「これ!!」
「え?」
「………チョコレートです!!」
「ラーラ?」
「本命ですからね!!あたしは先輩のこと、ずっと変わらず好きなんですからね!!」
何故か怒ったような告白に、カミュはしばらく目を丸くしていたが、やがてゆっくりと微笑むとそれを受け取った。
「そうか…ラーラ、ありがとう」
そして、紛らわしいことしてごめんなと謝った。そんな仕草にラーラはもう一度顔を赤くして、ぐすりと鼻をすすると涙を拭った。
「全くです…あたしは先輩のこと、」
「ああ、泣くほど好きみたいだな」
「!!」
「…嬉しいよ」
言って笑ったカミュに、ラーラは今度こそ何も言えなくなった。
(だから君は変わらずにいつもそこにいてくれるんだね)
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相思相愛ぽくしたら予想以上に甘くなってしまった。
まぁバレンタインだから良しとしよう。
本来はもうちょっとイケイケラーラちゃんと押される先輩が好きです。
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