去年のバレンタイン用にと書いていたバレンタイン10題、間にあわなくてお倉入りしたのを救済しようかと思ったんですが、このままで行くと今年も間にあわないのが目に見えていたので、出来あがっているのだけさっさと救済してしまおうと思いました。
ちなみにお題配布元さんは既に閉鎖されていますorz
順番はお題にあてはめたCPをお題番号順に書いたので適当です。
いつもより糖度2割増。
ということで追記よりどうぞ。
「溺愛で10のお題」
「なんだ、これは」
「えっと、あの、その」
目の前に差し出されたその包み紙をおかしなものを見るかのように見下ろした相手に、差し出した側の気の弱い少女がびくりと身を縮ませた。
その反応に一度ため息。すると少女はさらにびくびくと窺うように視線を逸らす。ごめんなさいと開きかけた口は相手の言葉に遮られた。
「だから、これは何だと聞いている」
べつに単純な質問だ。この行為に不快を感じての言葉ではない。本の魔物である彼は、彼が封印される前になかったこの行事を理解できていないだけなのだ。
だがそれを知らない鬼の少女は気に障ったのかと思って説明ひとつ出来ずにいた。
故に間を流れた妙な空気。リデルは泣き出しそうに顔を歪めつつ、必死に堪えていた。
だめだだめだここで、泣いては。
「あの、今日は、バレンタインで」
「バレンタイン?」
「えっと、女の子から、その、大切な人に、ちょ、チョコレートをあげる日なんです、」
「つまり?」
「私から、あ、あやさんに」
まくしたてるように彼女は一気にそう言い切った。(気の小さいリデルにしてみればの話、だが)そんな様子を見送った魔物が、少女とチョコレートを見比べてもう一度首を傾げる。そこでもうひとつ単純な質問。
「………何故私に」
先ほどは、「これは何だ」だったが次は「何故自分に」だ。そう何故私に。おかしな話だ。先程言ったではないか、彼女は、自分で。
大切な人に渡すのだと。
リデルは顔をあげた。もう泣きそうな顔はしていなかった。ただ、小さく照れたようにはにかむと、一言。
「あやさんは、私の痛みをわかってくれる大切な人なんです」
そう言う少女が笑う瞳には涙が溜まっていた。
だが、その彼女の言葉はただの傷の舐め合いだということは魔物にはわかっていた。人と違うが故の傷。もっとも他人と普通に生活が出来ている以上は自分より幸せだと思うが、十分に。
気のせいだ。錯覚だ。彼女のそれは違うと、突き返してやらねばならない。
お前と自分の傷とが、同じなどと思うなと言ってやらねば。
「…………感謝する」
だが、魔物はしばらく無言で彼女を見送った後に、ゆっくりとそれを受け取った。
嬉しそうに笑顔を浮かべる彼女に、小さく瞳を細めながら。
「……はい!」
彼女のそれがたとえ愛情の履き違えであったとしても、こうやって正面から愛情を向けられることは、魔物にとってははじめてだったのだ。
他人の好意に触れたことのない彼にとっては、たとえ勘違いの情だったとしても、嬉しく、ありがたい、それは紛れもなく、愛だった。
魔物と言われていても彼はどうしようもなく優しく、寂しい、ただの愛に溺れるひとだったのだから。
(こころに小さく陽がともる。人を求めることは過ちでないと、いつか気づくときがくる)
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実はこっそり推している怪クル×リデル
畏怖されるもの同士良いと思うんだ。
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