有り余る魔力を無駄なことに使うことに定評のあるサタンですが、シェゾも結構無駄に細やかなことにさりげなく魔力使ってるといいと思う。例えば玉ねぎが染みるのがいやだから眼球上にだけ防御魔導張ったり。
そんな妄想をしていたらこんなんでました。
追記よりどうぞシェアルです。
シェゾってああ見えて結構、否、ある意味見たまんまなのかもしれないけど。
言語能力関係のこと以外に関しては何でもそつなくこなしてしまう方だ。
だからって。
「…なんでキミはそうやって平気な顔して玉ねぎ切ってるのさ」
ぐす。
ボクが鼻をすすると同時に隣で包丁を握っていたシェゾが此方を見た。
彼の目の前にはまな板、と、綺麗に切られた玉ねぎの山。
今日の夕飯のカレーの材料である。
市場でカレールーの安売りしてたからうっかり買い込み過ぎてしまって。
たまたまシェゾにあったから夕飯ごちそうするよって言う話になった。
とはいえカーくんもいるし、シェゾだって見た目の割に量を食べる人なので、材料が半端ない。
当然大量の材料を切っていくことになったんだけど、っていうところまでは良かったんだけど。
…厄介だったのが玉ねぎで、最初はボクが切っていたんだけど、いかんせん作る量が多すぎて半分も行かないうちに目が痛くなって涙が止まらなくなった。
結局見かねた彼が交代してくれたってわけ。
(ごちそうするはずだったのに結局手伝ってもらっちゃってるし…)
別にボクの包丁さばきが下手だったとかじゃないんだよ?
まぁ確かにシェゾと比べたら劣るんだけど、というか彼はどうしてこんなに料理が上手なのかいまいち腑に落ちない。
女の子としてボクはどうなのって、ちょっとへこむよね。
とまぁそれはまぁ、彼の方が長く生きているわけだし、剣…というか刃物の扱いには慣れてるだろうから納得がいくとしても、だ。
おかしいのはその彼。
あれだけの量の玉ねぎを切り刻んで置きながら涙一つ流さないってことだよ!
ボクなんか既に涙ボロボロで鼻水まで出てくるし、きっと目だって真っ赤でとてもみられたモノじゃないような無様な状態のはずなのにさ。
「ずるい」
「あ?…何がだよ」
いくら彼が見た目完璧で料理上手で、性格さえ抜けば完璧な人だからって、玉ねぎを切っても染みないなんてそんなとんでもないオプションボクは知らない。
ボクはもう一度鼻をすすりながらシェゾを恨めしそうに見つめた。
「…なんで泣かないのさ」
「はぁ?なんでだよ」
「だから玉ねぎ。普通目に染みるでしょ」
理不尽だ。そうボクが呟いたらシェゾはそこで改めて自分の切った玉ねぎの山を見て、それからああと一言だけ軽い息を吐いた。
それからさらりととんでもないことを言ってのける。
「結界」
「……は?」
相当間抜けな声だったと思う。
いや、だってそれくらい今のタイミングで出てくるにはおかしい単語に聞こえたんだ。
今、彼はなんて?え?ボクの耳が正常なら今彼は結界と言った。
「眼球手前と、あと鼻付近な。空間遮断系の結界を張ってる」
「え…」
シェゾ、曰く。
玉ねぎが染みるのが否だから玉ねぎを切る前に自分に空間結界を展開させているらしい。
しかも鼻に至っては、「匂い」は通らないとまずいので限定作用をするレベルのもの。
……学生であるボクでもわかる、否、ボクだからこそわかる。
「……どんな高等技術だよそれ……」
更には玉ねぎを切る前、彼からそんな高等魔導を展開しているそぶりは見えなかった。
ということはそれだけの芸当をさも自然にやってのけたということで。
大体にしてそれだけの魔導を、玉ねぎに対して展開しているところからしておかしい。何かおかしい。
もっと他に活用する場面は無かったのか。
しかし試しに聞いてみたらやっぱり変な答えが返ってきた。
「…っつわれても…空間結界は魔力の消費がでかすぎるから人体に対して展開すると燃費悪いんだよな」
だったらなおさら玉ねぎなんかに対して展開しないでください!!
結局、ボクは目の痛みの代わりに襲ってきた頭の痛みに思わず目頭を押さえるのでせいいいっぱいだった。
「…キミも大概、余りある魔導力無駄に使ってるよね…」
どこかの魔王様と良い、魔力って余るとその分変な人になってくのかなぁなんてぼんやり思った。
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