たとえば、例えばだよ?もしも生まれ変わったらぼくたち、ファンタジー小説に出てくるみたいな、『高校生』っていうのになれたらって。
みんな、ぼくもルルーもラグナスもドラコもウィッチも…キミも、同じクラスでさ。はは、年齢が違うからさすがにそれはむりかな?
サタンなんかは校長先生とかやったりしてさ。サタンらしくわけのわからないイベントとか開いてみんながうっとおしがりながらも楽しんだりして。
けど……ほら、君なんかは授業はまともに出なそうだから、たまに一緒に屋上なんかでサボったりしてさ、先生に怒られて些細な文句言ったりして、ただ勉強したり将来に悩んだりしながらさ、戦いなんて無縁で、ちょっとした何でもない出逢いなんかに運命とか感じちゃったりして、そんな、普通に。普通に。
アルルはそこまで言って喋るのを止めた。正確にはやめざるを得かなった。
笑い声はいつしか引きつった音にしかなっていない。一歩足を踏み出した足がもつれて膝をつく。
焼けた草の臭い。乾いた土の匂い。そして血の匂い。
この場に立っている命あるもののはもうアルルだけだった。
アルルは話しかける。相手からの返事が無くとも。だれひとりとして返事を出来る状態にないと知っていても。
なぜこんなことになったのかアルルにはわからない。何故この世界でなければならなかったのかも、何故自分たちでなければならなかったのかも。
アルルは足元の死体に話しかける。ついさっきまでは息をしていた、キミ。
そしてアルルは見失う。
戦う意味を。
見失わないように信じ続ける。
せめて生まれ変われると。
ねぇ、たとえば生まれ変わったらぼくたち、運命なんか知らない世界で、普通に。
恋とか出来たらいいよね。
(ただ、普通に生きたかった)
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